自動車整備事業の規制が大幅見直しされました

作成日: 2025年9月1日

国土交通省は令和7年7月8日、自動運転等の先進安全技術への対応、点検・整備を行う人材の減少といった課題解決に向けて7項目の自動車整備の規制見直しを公布しました。

すでに始まっているものもあれば、2025年10月から始まるものもあります。ぜひご確認ください。

1.認証工場の機器要件の見直し

施行

令和7年7月8日

内容

認証工場が備えるべき整備用機器は、道路運送車両法施行規則に定められています。しかし整備技術の進化に伴い、現場では以下のような変化が起きています。

  • 「使われなくなった機器」が存在する(実務で代替手段が普及)
  • 「新たに必要となった機器」が発生している(電子制御対応など)

以上の背景により、認証工場が備えるべき機器の見直しが行われました。

廃止(設置不要)とする機器

下記の機器は、実務上の運用・代替技術の普及を踏まえ設置を不要とします。

タイヤの傾きを測定する機器

  • トーインゲージ
  • キャンバーキャスタゲージ
  • ターニングラジアスゲージ

※現在はアライメントテスタでの測定または外注が一般的です。

小型・軽・二輪の整備で使用しない機器

  • ホイールプーラ
  • グリースガン/シャシ・ルブリケータ
  • ベアリングレースプーラ

※普通(大型・中型)・大特を扱う工場を除き、設置不要とします。

エンジン・バッテリの機能確認機器

  • 比重計
  • エンジンタコテスタ
  • タイミングライト

※比重計はバッテリテスタ、その他2種は整備用スキャンツール等があれば設置不要とします。

追加(必須)

義務付けは、認証の新規取得時、又は事業場移転時から適用

  • 整備用スキャンツールの設置を必須とする

2.指定工場(大型)の最低工員数の緩和

施行

令和7年7月8日

内容

指定工場の最低工員数は、点検整備・検査の分業体制を考慮して定められてきました。
しかし、省力化設備・機器の普及や人手不足により、最低工員数を満たせず指定を返上する事業者も出ています。

  • 最低工員数を満たせず指定を返上せざるを得ない。地域の整備能力が不足するおそれがある
  • 単純な緩和は、点検整備・検査を適切に実施できない事業者を生むおそれがある
  • 省力化等を前提にした緩和を検討してほしい

改正内容

指定工場(大型)の最低工員数を5人から4人に緩和。ただし以下の要件を満たすことが条件。

  • ① 省力化設備・機器が導入されていること
  • ② 合理的な管理体制が確保されていること
  • ③ 工員の処遇が確保されていること
  • ④ 工員の質が適切に確保されていること

※ 中型・小型・二輪の指定工場(最低工員数4人)については、引き続き調査検討。

3.自動運転車の検査員要件の強化

施行

令和11年4月1日

内容

指定工場における検査は「自動車検査員」でなければ行うことができません。
従来は指定自動車整備事業規則(昭和37年運輸省令第49号)に基づき選任要件が定められてきましたが、自動運転車は電子制御装置の塊であり、検査には電子制御に関する高い専門性が求められます。

  • 自動運転車の検査は、電子制御に関する知識・能力を有する「1級自動車整備士」に行わせるべき
  • これは1級自動車整備士の価値向上にもつながる
  • 一方で、普及に見合う十分な数の1級整備士の確保が課題

改正内容

自動運転車(レベル3・4の自動運行装置を搭載した車両)の検査を行う自動車検査員は、現在の要件に加え1級自動車整備士資格を保有している者の中から選任。

  • 自動車検査員(1級自動車整備士資格) → 自動運転車の検査が可能
  • 自動車検査員(2級自動車整備士資格) → 施行日時点で自動運転車の検査を行っている指定事業者は、4年間に限り検査可能。

※ 従来の車両検査は従来通り2級資格の検査員も担当可能。

4.自動車整備士資格の実務経験年数の短縮

施行

令和7年7月8日

内容

自動車整備士資格を取得するには、「自動車整備士技能検定規則」に基づき、実務経験を満たし技能検定試験に合格する必要があります。
※ 専門学校等(一種養成施設)を修了した場合は実務経験が免除されます。

近年は整備作業が「機械中心」から「電子中心」となり、作業経験よりも座学の重要性が高まっています。

  • 高校生が3級取得後、2級取得までに3年かかるのは長すぎる
  • このため、自動車整備士を諦める若者もいる
  • 若者が整備士を目指しやすい資格体系にすべき

改正内容

自動車整備士資格取得に必要な実務経験期間を短縮。

  • 2級自動車整備士:3年 → 2年
  • 3級自動車整備士:1年 → 6か月
  • 特殊自動車整備士:2年 → 1年4か月

5.「電子」点検整備記録簿の解禁

施行

令和7年7月8日

内容

自動車の使用者は、「点検整備記録簿」(紙)を自動車に備えなければなりません。
ディーラー等では、点検整備記録簿の内容を電子的に管理していますが、要件を満たすために別途紙の記録簿も交付しているのが現状です。

  • 点検整備記録簿も、指定整備記録簿、特定整備記録簿、自賠責保険証と同様に電子的保存を可能とすべき
  • ただし、求められた場合に速やかに提示できることが条件

改正内容

点検整備記録簿の電子保存を認める。紙による保存も引き続き可。

  • スマートフォン等での保存ファイル
  • SDカード等の外部メディアでの保存ファイル
  • 紙の点検整備記録簿のスキャンファイル

当局から提示を求められた場合、直ちに明瞭な状態で表示できること。
※故障、バッテリー切れ、電波状況、操作に不慣れ等で表示できない場合、要件を満たさない

6.整備主任者等のオンライン研修・講習の解禁

施行

令和7年7月8日

内容

法令で義務付けられている「整備主任者研修」および「自動車検査員研修」は原則として対面での実施が求められています。
また、自動車整備士養成施設における「講習」も対面で行う必要があります。

  • 他業種で広く行われているオンライン方式を導入すべき
  • オンラインによる研修・講習の解禁により、講師・受講者双方に柔軟な対応が可能
  • 人材の効率的な活用が促進される

改正内容

「整備主任者研修」「自動車検査員研修」の座学、および自動車整備士養成施設における座学講習についてオンライン方式を可とする。実技講習は引き続き対面で実施。

  • ライブ配信形式での座学受講が可能
  • サテライト配信形式での座学受講が可能
  • 動画配信形式での座学受講が可能

7.スキャンツール等による点検可能範囲の拡大

施行

令和7年10月8日

内容

自己診断機能を搭載した自動車では、スキャンツール等を用いて目視や操作による点検と同等の確認が可能です。
スキャンツールを使うことで、作業時間の短縮と作業員1人あたりの付加価値向上が期待されます。

改正内容

以下の点検項目について、目視による確認に代えてスキャンツール等での確認を可とする。

  • 日常点検:ブレーキ・ペダルの踏みしろ、ブレーキのきき
  • 定期点検
    • ブレーキ・ペダルを踏み込んだときの床板とのすき間
    • 倍力装置(ブレーキ・ブースター)の機能
    • 二次空気供給装置の機能
    • 排気ガス再循環装置の機能

例)
従来はブレーキを踏み込んだときの床面とのすき間をノギス等で測定していたが、今後はスキャンツール等による確認でも可。 平均で195秒/台の作業時間削減が見込まれる。

国土交通省 資料

(出典:国土交通省 Webサイトより https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001899721.pdf

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